NHKラジオ講座でお馴染みの
マルコ・ビオンディ先生が語る
語の由来(1)
ラテン語とギリシャ語における“mondo”と”cosmo”の意味
「生命の宿るところ、また人間活動の場としての地球」という意味を持つmondo、悪魔や下劣で卑しい物事について述べるときに使う「汚い、不潔な、不純な」という意味のimmondo、野菜の食べられない部分など「不要な物を取り除いて、きれいにする」という意味を表すmondare、「ゴミ、汚れ」という意味のimmondizia。これらの単語には密接な関係があります。
この関係を理解するには「きれいな、純粋な、清潔な」という意味を表すmundusというラテン語にさかのぼって考えてみる必要があります。この言葉は13世紀から使われ始めたのですが、それは当時この「世界(mondo)」が清潔とは言えないまでも、神の叡智によってきちんと整理整頓されていると考えられていたからなのです。
イタリア語のmondoには文語的な形容詞として「きれいな、澄んだ、清潔な、整頓された」という意味もあります。
しかしながら、mondo (mundus)の最も古くて主要な意味は「宇宙とそれを構成するすべてのもの」です。 つまり、かつて古代ローマの作家エンニウスによってmundus caeli vastus(果てしなく広い天空)と詠まれたように、 mondo (mundus) は天体の集まりのことを指していたのです。ギリシャ語起源のcosmo(kòsmos)という語もこの意味を踏襲しています。第一義は「整頓」ですが、「飾り」という意味もあります。宇宙とは調和や美しさを表わす法則の集まりで、その調和や美しさというものは化粧をしたり着飾ったりする人が求めているものにも近いのです。(さらに、mundusもこれと同じように「装飾」という、いわば美に関する意味があります。)
したがって、kòsmosとは整頓された秩序ある世界のことで、混沌とした調和のないカオスと対照的なものです。ここから派生したのが「規則」「装飾」という意味のkòsmesis(イタリア語のcosmèsi、あるいはcosmeticaは顔や体の美しさをケアする技術のことを指します)と、形容詞のkòsmiosです。この形容詞は「整頓された」という意味を表しますが、「(市民として)この世に属している」という意味もあります。
普段、化粧をすることがいわばカオス(混沌)を整頓する行為だと思うことはないでしょう。でも、美しさとは人の顔においても秩序と調和を保つことなのです。
イタリア語ではcosmologia「宇宙論」、microcosmo「小宇宙」、cosmonauta「宇宙飛行士」、cosmopolita「国際人」など、cosmo-を組み合わせて作った語がたくさんあります。
つまり、私たちと宇宙の間には、私たちが想像しているよりもずっと奥深い繋がりがあるのです。
<つづく・・・>
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